香水と嗅覚

本能的香り評価は、嗅覚が他の感覚よりも本能に密接なかかわりをもつこと、また知性の関与する度合いが低く、より経験的、反射的に、良し悪しを判断しやすいとおもわれる。

事実、嗅覚関係の言葉の数は視聴覚に比べ圧倒的に少なく、このことは知的な処理が香りについて行われる事が少ない事を意味している。

ある香りをかいだ時、その香りにまつわるイメージ(ことば)の連鎖が湧いてこないようでは香りをコミュニケーションの道具として使うことはできないことが、視聴覚分野の芸術にくらべ香りの芸術が未発達なのはこの為であるとおもわれる。

我々がある香りをかいで感じた反応の理由を説明するのは大変にむずかしい。

例えば「なぜかいやな香りだ」であり、「なぜか良い香りだ」としか言いようがない場合が多い。

例えば、腐った食物の匂いは仮にそれが食物の腐った匂いであると知らなくても「いやな匂いだ」という感じを与える。

身体に危険をもたらすものの匂いは経験的に又は条件反射的に不快感につながるか?

当然そのようなケースもあるだろう。

しかし同じ無意識の反応でも、もっと本能的に快・不快を引き起こす匂いもあるはずです。

匂いの中でも性に関連した匂いは特に知性に関与せずに、また条件反射的でもなく、我々に働きかけている様子です。

香水の男女差

動物ではいわゆる「フェロモン」=「性誘引物質」が種族保存における重要な物になっている。

「ジャコウ」は「シカ類」の雄が雌をひきよせるための性腺分泌物であるが、人間でも、ジャコウの香りに相当する、エキザルトリッドという物質の匂いに特殊な嗅覚現象のあることが認められている。

この物質の匂いに対する感度に男女差があったり、女性の感度が性周期に関係があったりする。

またアメリカの産婦人科医ブルースはマウスに関す実験で異系のマウスの匂いが流産を起こさせる事実を発見した。

我々はふだん気にしたことはないけれど、意外に、自分の匂いや異性の匂いを識別する能力を持っていることが科学的に確かめられている。

赤ちゃんは自分の母親をその匂いで識別できるという実験データもある。

いくら人間の嗅覚が知性の関与を受けにくいとは言っても、ネコがまたたびの匂いに反応するように、何かの匂いにあやつられるということは少ないであろうが、少なくとも本能的にあるいは学習的に、または反射的に香りをとらえ、反応する可能性を否定しきれるものではなさそうです。